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朝、起きてから妙に温泉に入りたくて、午前中は仕事を辞めて家族で温泉に浸かってゆっくりする事にしました。
「平日の午前中から、温泉なんかに浸かってたら完全な隠居だよなー。」と嫁さんと話しながら近所の温泉に向かいました。
車を走らせていると、手を挙げている、おばさんに出会いました。車を止めると、近くまで乗せて行って欲しいとの事。顔が青ざめ、息がゼェー、ゼェー、いっています。
散歩にでも出て急に具合が悪くなったのかな?
おばさん曰く「ヒメヅカ」に行きたいとの事。
そんな地名、この近くで聞いた事がないんだけどな~???
とりあえず、おばさんのナビで車を走らせましたが、どうも、おかしい・・・
車は、どんどん山の中へ。
絶対に変だ!
よくよく、おばさんに話を聞いてみると、この界隈には今日、初めてやってきて、意地悪をされて、置き去りにされてしまったので、さっぱり、分からないとの事。
とりあえず、もう一度、山の麓まで引き返し、元々、行こうと思っていた温泉のおじさんに「ヒメヅカ」という地名を聞いてみるが、やはり、聞いた事が無いとの事。
そこで、温泉のおじさんと一緒に、どこからやって来たのかとか、連絡先とかを、色々と聞きましたが、どうもよく分からない・・・
いくつか、覚えていた電話番号に電話をしてみると、長野市の、このおばさんのお姉さんという人に電話が繋がりました。
結局、このおばさんは同じ穂高の人でしたが、アルツハイマーということでした。暫くして、この、おばさんの面倒を見てる人が迎えに来てくれました。息がゼェー、ゼェー、いってるのは、こういう症状の人がよくなる過呼吸ということのようでした。
よく、こうして家を抜け出してしまうんだそうです。
「ヒメヅカ」という地名や、置き去りにされたというのは、きっと、この、おばさんの過去の記憶だったのでしょう。
ゼェー、ゼェー、いいながら、車の中でうちの子供を可愛い、可愛いと言ってくれた、おばさん。
アルツハイマーにかかるには、まだ若く、可哀想に思いました。
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